悩める相続 母が認知症で相談できない

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家裁が選ぶ代理人と協議
2015/4/1 3:30 朝刊
 Aさんは父を亡くした。遺言が残されていなかったため、遺産をどう分けるか、母と弟と話し合って決めなければならない。しかし困ったことに、母は認知症で相談できる状況にはない。どうすればいいのか。

  財産を相続する人のいずれかが認知症や知的障害、精神障害で判断能力が十分にないというケースは現実にあります。だからといってその人を参加させずに遺産分割協議をしたり、取り分を不当に少なくしたりすることは許されません。
 弁護士の上柳敏郎さんは「判断能力が不十分な人にも財産を承継する権利がある。その相続人を参加させない遺産分割協議は法律的には無効になる」と指摘します。誰かが代理人となって本人のために協議に参加する必要があるのです。
 ここで有効になるのが、「成年後見制度」です。認知症などの人の財産を守るためにある仕組みです。家族などが家庭裁判所に申したてることにより代理人を選任してもらいます。この人のことを「後見人」と呼びます。
 後見人は本人に代わり、法律行為を全般に行います。例えば介護保険の申請や施設入所の契約です。預金や不動産などの財産管理も大切です。とりわけ遺産分割協議に参加することは「財産管理上、重要な行為」と司法書士の船橋幹男さんは話します。
 本人の判断能力の程度により成年後見制度は3段階に分かれます(後見、保佐、補助)。判断能力が低いほど、後見人が持つ権限は重くなる仕組みです。最も深刻で判断力がほとんどない場合、後見人(成年後見人)は財産に関するすべての法律行為を本人の代わりに実行できます。
 後見人には子どもなど親族がなる場合が全体の42%(2013年、最高裁判所まとめ)です。仮にAさんらが、家庭裁判所に成年後見制度の適用を申し立てたとしましょう。Aさんが後見人に選ばれる可能性があり、その場合、日ごろの財産管理や契約行為について母のために仕事をします。
 ただし、遺産分割協議に限って見ると、家裁は特別に配慮して、相続人以外の人を代理人に選任します。相続人が代理人を兼ねると「それぞれの利益が相反する」と司法書士の山北英仁さんは言います。Aさんが財産を多くもらうために母の権利をないがしろにする懸念があるのです。
 家裁が選任する代理人は「特別代理人」といい、「弁護士や司法書士ら法律専門職が務めるケースが一般的」と司法書士の大貫正男さんは言います。その人が母の代わりに分割協議に参加して、母が受け取るべき財産の権利を主張することになります。
 本人の判断能力の程度によっては成年後見制度を利用せずに遺産分割協議をするケースもあるようです。しかし本人の権利を保護するためには制度の利用が必須です。

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