グループ間取引、課税拡大

グループ間取引、課税拡大
増・減資や出向社員の人件費 国税、「利益移転」調査厳しく
2015/4/6 3:30 朝刊
 企業のグループ間取引が「利益移転」にあたるとして税務当局から課税されるケースが目立つ。親会社が子会社の増資や減資に応じた場合に課税されたり、海外子会社に出向した国内親会社の従業員の人件費に課税されたりなど広範囲に及ぶ。企業は当局の求めでやむなく修正申告に応じる例が多いが、訴訟に発展する場合もあり、今後のグループ展開に影響を及ぼす可能性がある。 (編集委員 後藤直久)

 「あの訴訟の行方はどうなるのだろう」
 企業税務関係者や弁護士、税理士の間で注目を集める裁判がある。神鋼商事が税務当局を相手取り、2013年末に東京地裁に起こした訴訟だ。
神鋼商事は提訴
 発端は神鋼商事のタイ子会社による07年3月の増資だった。神鋼商事は増資を額面で引き受けたが、大阪国税局は「時価を大幅に下回る引き受けであり、差額は神鋼商事の利益(受贈益)となる」として追徴課税した。神鋼商事は国税不服審判所に不服を申し立てたが認められず、訴訟に踏み切った。
 神鋼商事の顧問税理士の朝長英樹氏は「タイ子会社の現地株主が株式を売却する場合は額面金額によるとの取り決めがあり、増資の引受価格も額面なので、利益移転はあり得ない」としている。
 ある大手商社も似たようなケースで以前、訴訟をした。ただ10年12月に東京高裁で敗訴。上告したが最高裁が不受理としたため高裁判決が確定した。この前後から「当局は商社を中心に海外子会社の増資に絡む税務調査を強化した」(複数の弁護士)といわれ、神鋼商事のほか蝶理などが追徴課税された経緯がある。
 減資に応じた親会社が子会社に利益移転をしたとして課税されたケースもある。日産自動車のケースがそれで日産は最高裁に上告中だ。当局は子会社の減資に伴い日産に額面で払い戻された金額が時価を下回るため時価との差額を日産による子会社への利益移転(寄付金)とした。日産側は「当時の商法では一定の限度額を超えて払い戻しできなかったので利益移転ではない」と主張する。
 神鋼商事の一審判決、日産自動車の最高裁の判断は早ければ年内にも下される見込みだが、仮に当局の主張が認められると「当局の調査は厳しくなりグループ再編に影を落としかねない」(複数の弁護士、税理士)と見る向きは少なくない。
 増・減資だけではない。企業グループ間の日常的な取引でも追徴課税されるケースは多い。
 「出向従業員の給与が海外子会社への寄付金の可能性がある」
「強引な事例も」
 ある中堅メーカーは最近、税務調査で当局からら指摘され、慌てて顧問税理士に相談中だ。
 このメーカーは海外子会社へ従業員を出向させ、その給与は全額、親会社であるメーカーが負担し税務上の損金(費用・損失)にしていた。だが当局は「本来、海外子会社が負担すべき給与を親会社が負担するのはおかしい。給与は子会社への寄付金とする」という。
 別のメーカーは「留守宅手当金は寄付金にあたる」と当局から指摘され仰天した。海外子会社に出向中の従業員のため、給与の一部を国内で支払うのが留守宅手当金。税務当局は従来、親会社の損金にしてよいとしていた。ところが最近「半ば強引に寄付金課税しようとするケースが目立つ」(税務訴訟に詳しい藤曲武美税理士)。
 広告宣伝費でも海外子会社で製造・販売する商品の広告宣伝費を国内親会社が全額負担すると「利益移転を指摘される可能性が大きい」(元仙台国税局長の川田剛税理士)。当局に指摘される煩わしさから「海外への広告宣伝費負担を控える動きもある」(川田氏)。
 税務調査の際に企業側はどう対応すべきか。
 最も注意したいのは子会社を立ち上げ、軌道に乗せるまでの段階。親会社が広告宣伝費などを負担するのは一般的だが、当局からは「利益移転があると指摘されやすい」(藤曲氏)からだ。
 企業側は「子会社の経営が軌道に乗れば親会社にも利益をもたらす」と反論することが多いが、当局は認めない。企業には「親子会社間の費用負担の金額などについて親子会社の業績見通しなどに基づいた合理的な説明資料を用意する必要がある」(朝長氏)だろう。
 経団連の阿部泰久常務理事は「海外子会社との取引の場合、比較対象取引を示せるなら安易に寄付金課税に応じず、移転価格税制の適用を主張する姿勢が大切だ」という。企業活動のグローバル化が進む中、移転価格税制を適用される場面は増えている。価格設定の妥当性などを文書化する動きが広がっており「そうした資料も活用しながら対応する必要がある」(弁護士の宮崎裕子氏)。

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