たった1%の値引きが致命的に利益を削るワケ

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たった1%の値引きが致命的に利益を削るワケ
李 顕史:公認会計士、税理士

ほんの少しならいいだろうと思っていると・・・(写真:Graphs / Imasia)
昨日の3月31日は、単に月末というだけでなく上場企業の場合で約7割と、日本企業の大半が採用している3月期決算の最終日でもあった。ここ1~2カ月は、さまざまな企業が売り上げの上積みを狙おうと動いた時期だった。場合によって、値下げ戦略を採った企業も少なくない。

営業担当者で取引先から値引きを要求され、それに応じた経験がある人は多い。もちろん今後の取引維持や拡大に繋がるのであればいいが、単に営業成績を良くするためだけにやっているとしたら好ましくない。わずか1%の値引きですら、致命的に利益を削ることがありえるからだ。

どういうことか。順を追って説明していこう。

1つ1000円の商品を例に挙げたい。これを取引先からの要請に基づき、1%だけ値引きして販売したと仮定する(図表参照)。

ポイントは値引きをしようがしまいが、商品をつくるための原価や販売するためなどにかかる経費は変わらないということだ。この商品の場合で900円だ。値引きがなければ営業利益は100円となる。一方、標準価格から1%、10円値引きして売ったとしよう。経費は変わらないので営業利益は90円になる。

つまりは、本来得られたはずの利益を10%削ることになるのだ。逆に1%値上げして売ったとすればどうか。売上高は1010円で営業利益は110円。利益が1割積み増されることになる。

これを売上高に占める営業利益の割合、営業利益率に直すと10%だ。実はこの水準はかなり高い。経済産業省の「平成26年企業活動基本調査速報-平成25年度実績-」によると、平成25年度における営業利益率の全業種平均はたったの3.4%だ(グラフ参照)。

1,000円の売上高に対して残る営業利益は34円、966円が経費ということになる。仮に営業利益率3.4%の会社が、商品やサービスを1%値下げして販売したらどうなるか。売上高1000円に対する営業利益は24円に低下する(図表参照)。本来得られた利益を3割も落とすことになるのだ。これも逆に1%値上げできたとしたら、利益は3割積み増しできる。

筆者が会計監査や経理・財務部門のコンサルティングをしているある会社で、「大口の取引が決まりました」と意気揚々と話す営業部長がいた。その直後、経理・財務部長が来て「資金決済が5カ月後で、資金繰りが大変です。運転資金を借り入れで賄います」と話すこともあった。

このように、資金決済(売掛金回収)までの期間が長期化する場合、実質的な値引きと同じになることにも注意を払いたい。会社によっては大口取引を優遇するという理由などで、販売した商品の代金回収として翌月末に手形でもらうケースがある。手形の決済は3カ月後なので、このケースは取引の成立から決済に至るまでの期間が最長で5カ月になる。

これも仮のケースを想定してみよう。4月1日に1億円分の商品が売れ、その代金を回収するまでの運転資金として1億円の全額を借入金で賄うとする。銀行からの利子率が2.4%とすれば、5カ月間で払う利息は100万円になる。これが販売側のコストになり、実質的な値引きとなって結局は、本来得られたはずの利益を取りはぐれる。

値引き販売するのなら理由を
値引き販売がいかに利益面に悪影響を与えるかがお分かりいただけたかと思う。現実には、「将来の大口取引が見込める」「新商品のためまずは実績が欲しい」「顧客から商品のフィードバックをもらいたい」など、値引きしてでも販売せざるを得ないケースはたくさんある。よって、値引き販売が一概に悪いと筆者も思わない。購入する側に立ってみても1円でも安く買いたいだろうし、購入担当者も予算の都合がつかない場合もありうるからだ。

ただ、値下げには理由を提示したほうがいいだろう。値引きする代わりに商品の品質を落としたり、本来できるはずのサービスを一部提供をしないという手段もある。筆者の場合は、クライアント企業の値引きに応じる代わりに、「取引先実績を実名で紹介させてください」と伝えることにしている。実績が新規取引先から選ばれる理由の一つだと考えるからだ。無条件に値引きすることだけは避けたほうがいい。

①1%の値下げでも、営業利益に与える影響は10%以上
②売上高営業利益率が低いほど値下げは利益に与えるインパクトが大きい
③代金決済はなるべく早く

 

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