親の家相続争い防ぐ 「代償分割」知ってる?

親の家相続争い防ぐ 「代償分割」知ってる? 
資金の準備 計画的に
2015/4/15 15:30 夕刊
 親の遺産のほとんどが家――。相続ではよく見られるが遺産分割で一番もめやすいケースでもある。特定の子どもが親の家を全て相続すると他の子どもの相続分はほとんどなく、不公平感が強いからだ。親の家に住み続ける人がいると家を売って分けるのも難しい。そこで注目されるのが「代償分割」だ。使い方の注意点などをまとめた。

遺産のほとんどが親の家というケースが多い
 「遺産の分け方が、あまりに不公平だ」
 東京都内に住む会社員の飯田繁雄さん(仮名、50)は弟の抗議にたじろいだ。
 飯田さんは妻子と両親の家に同居中だが、最近父親が死亡。母親は病気がちなので引き続き同居する考えだ。
 父親が土地、建物を全て所有していた。相続税評価額は土地が5000万円、建物が1000万円で合計6000万円。同居する飯田さんが全て相続するつもりだ。父親の金融資産2000万円は全て弟に相続させることで母親の了解も得て一緒に弟に伝えたところ弟が猛反発したのだ。
 弟の怒りは、兄の飯田さんの相続分が6000万円なのに、自分の相続分は2000万円と3分の1にすぎないことだった。「きっちり半分ずつにすべきだ」と主張する。
 飯田さんはこれからも母親の面倒を見るのだから「親の家を全て相続するのは当然だ」として譲らない。
◇   ◇
 弟の主張に沿って分けると親の家のうち2000万円分、つまり3分の1を実際に住まない弟が所有することで共有になる。家を建て替えたり売却したりする場合に弟の同意が必要になる。実際に住む飯田さんの抵抗感は大きい。弁護士の上柳敏郎氏は「もめ事の原因になるので相続人の間での共有は避けるべきだ」と話す。
 相続の専門家は飯田さんのようなケースは「決して珍しくない」(司法書士の船橋幹男氏)と口をそろえる。
 国税庁によると、相続税を負担する比較的遺産が多い層でも遺産に占める親の家など不動産の割合は半分近い。相続税を負担しない層では「親の家が遺産のほとんどという例が目立つ」(船橋氏)。
 「不動産に偏る遺産構成が分割を巡る家族間の争いの原因の一つ」(上柳氏)と見る向きは多い。2013年度の全国の家庭裁判所での遺産分割を巡る争いの件数のうち、遺産額5000万円以下が75%を占め「不動産絡みの争いが目立つ」(上柳氏)。
 どうすればもめずに分けられるか。
 遺産分割の方法には3つある(表参照)。まず「現物分割」。遺産を実際に分けるやり方で、金融資産ならば可能だが、不動産の場合は複数あるならともかく一つしかない場合は分けにくい。
 「換価分割」もある。遺産を売却してお金に換えて分ける方法だ。ただ残された家族が住む家は売りづらい。
 そこで注目されるのが「代償分割」。多く相続する人が少なく相続する人に対して一定額(代償金)を渡すことで納得してもらうやり方だ。
 飯田さんのケースでは、評価額が6000万円の家を相続する飯田さんが弟に2000万円を渡す必要がある。そうすれば兄弟の相続分はともに4000万円ずつとなる。
 ただ必要とされる代償金を実際に満額渡すかというとそうでもないようだ。親の家を相続して同居すると、介護などでお金が必要になる可能性があり、その分などを代償金から差し引くことが少なくない。飯田さんのケースでは1000万円前後の代償金でも解決する可能性がある。
 「親の家を誰が相続するのか、子どもの間で合意を得るよう対話を積み重ねるべきだ」(相続対策に詳しい阿保秋声税理士)と専門家は指摘する。その際、親の家を相続しようとする人は「なぜそれが必要か」を相続しない人に十分説明する必要がある。その上で、代償金の支払いを前提に金額や支払い方法(一括か分割かなど)についても話し合っておくことが大切だ。
 代償分割を利用するにはいくつか注意点がある。まず「遺産分割協議書」に代償分割について記述すること。遺産分割協議書とは「どの相続人がどの財産をどのくらいずつもらうか」について文書にしたもの。代償分割としてお金を渡した旨の記述がないと「受け取った人に贈与税が課税される可能性がある」(藤曲武美税理士)。
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 代償金を支払う相続人は事前に資金を用意する必要があることも忘れてはならない。親の家を相続した場合の代償金は少ない場合でも「数百万円提示されるケースが珍しくない」(阿保氏)。
 資金準備の一つの方法として生命保険がある。親が生前、自分を被保険者にして、保険料を支払って生命保険に加入し、死亡保険金の受取人は家を相続する子供にしておく。親が死亡して相続が発生すると、死亡保険金は受取人の固有の財産となり「遺産分割の対象となる財産にはならない」(上柳氏)。家を相続した子供は保険金を代償金に充てられる。
 飯田さんの場合は父親が代償金対策をしなかったため、兄弟仲がこじれた。遺産のほとんどが親の家という場合は、代償金の原資作りまで親子間で準備もしておくのがもめ事を避ける上では重要だ。
(編集委員 後藤直久)

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